朝7時過ぎに朝食に向かうと、同席していた方から驚きの情報が入ってきた。昨夜23時頃、口永良部島の噴火警戒レベルが「1(活火山であることに留意)」から「2(火口周辺規制)」に引き上げられたという。
まさか1泊2日の旅で警戒レベルが上がるとは予想外だ。火山活動がわずかに活発化したのだろう。そうなると、新岳や古岳周辺を一周する予定だった道路は、完全に通行止めになっている可能性が高い。
「やはり、昨日が一周のラストチャンスだったか」と、一周できなかった心残りが頭をよぎる。
🚴口永良部島 西側エリアへライド
フェリー出港までの時間を利用し、まだ訪れていない島の西側エリアを巡ることにする。目的地は西側の「口永良部島八景」3ヶ所だ。
9:02 宿に荷物を置かせてもらい出発。

空は薄曇りながら青空も見える。昨日と同じく島のくびれ部分の急坂を登り、西へ向かう道へ左折。この先も民家はほとんどないだろう。
登り続け、海側と山側の分岐を右折し、山側の道へ進路をとる。番屋ヶ峰(口永良部島八景の一つ)を目指し、さらに登る。
番屋ヶ峰への分岐を右へ、さらに急勾配を登っていくと、前方に白い影が2つ。宿の女将さんが話していた野ヤギだ。近づくと、ヤギは左の道へ逃げていく。「この道はどこに通じているんだ?」疑問に思いつつも、まずは山頂を目指す。
9:48 番屋ヶ峰に到着。
山頂には大きな避難施設があり、簡易トイレが並んでいるが、敷地内からの眺望は全くない。入口付近の道路から古岳(ふるたけ)、新岳(しんたけ)が少し見える程度だ。
「せっかく登ってきたのに残念。なぜここが八景なんだ?」施設の屋上からの景色が良いのかもしれないが、確認の術はない。

9:55 番屋ヶ峰を出発。
ヤギが逃げた左の道へ入る。すると、その先にはヘリポートがあり、北側には遮るものがなく水平線が広がる絶景だった。霞んではいるものの、硫黄島や竹島も望める。
「これだ!ここからの景色が八景の一つに違いない」
霞の原因は黄砂だろうか。景色を堪能し、満足して山を降りる。

次は西端の岩屋泊へ向かう。分岐まで戻り右折、すぐに左にある海側の道(帰路に通る予定)を横目に直進し、急坂を降りていく。
ヘアピンカーブを抜けると、三角コーンと倒れた看板に「立入禁止」の文字が入ったテープが絡まっている。
「この先が通行止めなのか?」「看板は風で倒れたのか?」

昨日、役場の案内所では「一番先まで行ける」と聞いていたため、状況が掴めないまま、とりあえず先へ進む。
しばらく直線の坂を降りていくと、ビックリな光景が目に入る。なんと道路の左側3分の2以上が、大きく陥没してなくなっている。これでは車は完全に通行不能だが、自転車や徒歩なら通れそうだ。
「それで『行ける』と言ったのかな?自転車なら通れるからか?」

離れた場所から陥没部分の下を見ると、崖になっており、さらなる崩落の危険性も感じられる。自転車を降りて、残された道路の右端を慎重に通過する。
後で調べると、この陥没は少なくとも3年前からあり、当時から車は通れず、徒歩やバイクでしか通れなかったらしい。
さらに道を進むと、今度は道一面に石や岩がゴロゴロ落ちていて、木の枝もたくさん散乱している。最近の強風だけでなく、火山の島なので落石も多い場所なのかもしれない。
10:25 最後のカーブを降り、海岸線にある岩屋泊に到着。
かつては集落があったようだが、今は人気がなく、海水浴や釣りで人が訪れる程度だろう。しかし、ここも八景の一つだけあり、眺めはいい。

行き止まりで休憩後、急坂を上り、引き返す。
10:56 山側と海側の分岐に到着。
帰路は予定通り海側の道へ右折する。急坂の途中のヘアピンカーブから、海と岬を望み、さらに進むと正面に古岳と新岳が見えてくる。
11:06 急坂の途中にある新村に到着。
ここが最後の口永良部島八景だ。自転車を案内板とその横にある木に立てかけてなんとか止める。

ここからの海岸線の景色はまさに絶景。八景すべてを巡ったわけではないが、海と山の両方が見渡せるここは、島内で一番の景色かもしれない。

11:10 新村を出発.
坂を下ると、数ヶ所、道路一面が厚い泥に覆われている場所がある。ドロドロの泥のため、自転車を降りて押していく羽目になり、靴が泥まみれになる。
アップダウンを抜けると、建物が見える。人の気配はないが、比較的新しい造りなので、家畜の厩舎として利用されているのかもしれない。近くには野生のシカの姿も。

そこから山側へ進路を変え、登っていくと、明らかに人が住んでいた場所に出る。道の脇にはコンクリート側溝があり、「新村開村百二十周年記念碑」の石碑がある。いつ建てられたかは不明だが、少なくとも120年間、人が住んでいた歴史を物語っている。今は野ヤギとシカがいるだけのようだ。

さらに登っていくと道端にまたヤギがいる。昨日、島の東側に行った時はヤギは見かけなかったが、西側にはかなりいるようだ。

11:39 山側の道と合流。
西側エリアのライドは終了。本村へ戻る。
11:52 口永良部港に到着。
♨️西之湯温泉での格闘
港で、軽トラに乗った同宿の方に「温泉に行きませんか?」と誘われる。車なので湯向(ゆむぎ)温泉にいくのだろう。そこは昨日行ったし、汗だくの体でシートを汚したら申し訳ないので、丁重にお断りする。
観光案内所のベンチで昼食をとり休憩していると、昨日お世話になった案内所の方に声をかけられる。
案内所の方:「自転車でずっと回ってきたんですか?」
自分 :「はい。昨日、今日で大体全部回ってきました」
案内所の方:「すごいですね」
自分 :「通行止めのゲートが開いていたようですが、工事でも?」
案内所の方:「そうかもしれませんね」
自分 :「昨日の17時過ぎても反対側の前田のゲートも開いていたので、入ってもいいのかなと思っちゃいました。入りませんでしたけど…」
案内所の方:「閉めない人がいるようで、気づいたら閉めるようにしているんですが…」
自分 :「岩屋泊の通行止めの看板も倒れていましたが…」
案内所の方:「風で倒れたんじゃないですかね」
フェリーの時間までまだ余裕があるため、まだ走っていない港前の東側へ向かい、その後、警戒レベルが上がった後の前田集落のゲートの様子を見に行くことにする。
12:24 案内所を出発。
12:37 前田集落のゲート前に到着。
ゲートは昨日と変わらず開いたまま。「ちゃんと管理しているのか?」
流石に今から向こうまで行く時間はない。あとは西之湯温泉に入ってフェリーの時間までゆっくりしようと思う。なるべく未走行の道を選び向かう。
12:53 西之湯温泉へ到着。
自転車をガードレールに立てかけ、海岸へ続くスロープと階段を降りる。人の気配はない。小屋の木の扉を開けると、すぐ目の前に湯船がある。脱衣所や洗い場はない。

服を脱ぎ、湯船の湯に触れると「アッチー!」足を入れるが、熱すぎてすぐに飛び出る。とても入れる温度ではない。
入り口付近には水道管からの水を溜めている水槽があり、洗面器やバケツも置かれている。これは「この水を入れて調整しろ」ということだろう。
バケツで水を何杯も湯船に入れるが、全く温度が下がらない。足を1、2秒しか浸けられない熱さだ。「諦めよう…」
入浴料200円を郵便受けのような投入口に入れ、自転車に戻る。まだ時間があるので海を眺めながらこの後どうするか考えるが、他に行く場所はない。
「よし、もっと大量に水を入れよう!」もう一度チャレンジするため、温泉へ引き返す。
今度は水槽の水を半分ほど空にする勢いで、大量に水を入れる。その結果、膝ぐらいまではなんとか浸かることができたが、それが限界だ。お湯が熱すぎて、バケツでの水入れでは全然ラチがあかない。
結局、洗面器でお湯をすくって体に浴びることで「温泉に入った」ことにする。これでもかなり熱かった。

小屋に隣接して露天風呂のような場所もあったが、水は少なく汚れており、とても入れる状態ではない。結局1時間以上格闘したが、その間、誰も来なかった。
13:50 西之湯温泉を出発。
🚢口永良部島を出港、屋久島へ
14:02 宿に戻る。
少し休憩して荷物をリュックに詰める。
14:33 宿を出発。
観光案内所でフェリーの切符を購入する。
14:38 口永良部港に到着。
自転車を折りたたみ、フェリーに乗り込む。
15:21 口永良部港を出港。
「さらばだ、口永良部!」東側を一周できなかったのが、唯一の心残りだ。

帰りの船もデッキで過ごす。沖に出ると、サルベージ船がタグボートに引かれているのが見える。
昨日折りたたんだ場所で自転車を組み立てる。
17:17 宮之浦港を出発。
港のバス停で、口永良部で同宿だった観光客のおじさんがバスに乗っていくのを見送る。
「ライフセンター ヤクデン」で買い物をするが、あまり食べ物がない。
17:42 宿に到着。
今宵の宿も「 民宿 アース山口」。 部屋は2日前に泊まった時の隣部屋だったが、部屋の大きさは変わらず、6畳の和室。宿泊料金が安く(素泊まり1泊¥3,800)、洗濯機や冷蔵庫、キッチン、離れにある電子レンジも使えて、しかも洗濯機は無料で使える。コストパフォーマンスがすこぶるいい宿なので、今回も迷うことなくここにした。
その後、郵便局とAコープに行くため、出かける。宮之浦大橋を渡っていると、突然クラクションを鳴らされた。歩道を走っていたため「なんだろう?」と思いクラクションの方向を見ると、対向車線を走る車から、ニコニコしながら手を振っている人がいる。
その人は、なんと今日の昼に温泉に誘ってくれた、口永良部で同宿だったおじさんだった。こちらからも手を振り返す。まさか屋久島で再会するとは思わなかった。
18:10 宿に戻る。
2日前に泊まった時と同じように、シャワーを浴び、洗濯し、晩飯を食う。
今日で屋久島と口永良部島の旅程は終了だ。屋久島ではヤクスギランドに行かなかったことが心残りといえばそうだが、優先順位は低かった。天気があまり良くなかったことを考えると、仕方ないと納得する。
明日からは種子島だ。天気は良さそうだ。
寝る。

走行データ
・走行時間:3h16m01s
・走行距離:27.63km
・平均速度:8.4km/h
・最高速度:27.8km/h
旅の費用
・フェリー代 :¥2,140
・入浴代(西之湯温泉):¥200
・宿代(アース山口) :¥3,800
・飲食代 :¥2,000
合計 :¥8,140
